魔女のシャトル

久しぶりにセドナへ行っていた。1年半ぶりくらいかな。
もうセドナはいいかな、他へ行く時間がなくなるし、と思いつつ、やっぱりセドナは圧巻で、ちょうどお伊勢さん参りみたいに、一年に一度くらい行くのは、精神安定ならぬエネルギー調整にとてもいいような気がする。

そもそも、今回のセドナは、しょっぱなから不思議な事づくめで、「ゆだねる」という事を学ぶ旅だったような気がしないでもない。

今回は仕事で、先方が車を出してくれるというので、レンタカーを借りず、シャトルで行く事となった。
朝、6時に家を出て、9時50分に着いて、10時のシャトルに乗るように予約を入れてあった。が、人数が早めにそろっちゃったから、あなたは11時半のシャトルで来てくれと連絡があり、空港でツイッターなどをしながらゆっくりと構え、シャトルを待つ。

ようやく11時半のシャトルが来た。9人乗りのセドナ行きシャトルは、私を含めて4人のお客さん。私以外の3人は西洋人の60才近くの女性。
ダーリン、メアリー、コニー。皆、するどい眼光をしており、斜め45度下を見下ろすような風体で、それぞれの味が濃い。

完璧なカントリーソングから出て来たようブロンドのカーリーヘアのコニーは、男言葉っぽくしゃべりつつ、車に乗るや否や,手づかみでホットウイング(チキンの辛い唐揚げ)を食べ始めた。

ショートカットに鶏の手羽先みたいな手をした指にジャラジャラと指輪やブレスレッドをつけ、細部に至るまでオシャレなダーリンは、小説家であり、学校でも時々教えてるんだ、と言った。

眼光のするどいブルネットのメアリーは、身体が悪くて、旦那ともうまくいってなくて、ストレスたまりまくり。人に相談したらセドナへ行くといいと言われ、PCも何もかもとられてここへ来たと言った。

私はメアリーと席が近かったので、話をしているうちに「誰かいいチャネラーを知らないか?」と聞かれた。
「何人か,知ってるよ。だけど、、、」と私は彼女の顔をみつめ
「あなた、チャネれるでしょう?」と言ったら
その眼光のするどい目がキラリと光り
「何故わかったの?」と声をひそめて近づいてきた。

私のまわりはとてもチャネラーさんが多いので、なにも難しい事ではない。だいたいチャネれるんじゃないかという人は雰囲気でわかる。
チャネれる人が見てもらうんだと、本当に能力のある人じゃないとダメだから、そうねえ、クラウディアはどうかしら?と名前を教え、そのまま会話の途切れを期に、ウトウトとした。

シャトルが停まったので、トイレ休憩かしらと思い、目をあけると、高速を見上げる畑の横に停まっていた。

運転手が携帯に向かって大きな声で話している。
「なにかのオイルが漏れて、煙を噴き出して来たんだよ。今、サンセットポイントの近くだ。危ないから高速を降りた。もう少し走ると思うから、路肩で少しだけ車を冷やしてからレストエリアまで行って、そこに止めてからまた電話をかけるよ」

カントリーが似合いそうなコニーが、チキンの手をジーンズで拭きながら外にでて、ボンネットをあけて色々調べている。9月のセドナの真昼はまさに炎天下で、汗をしたたらせながらスパナやレンチを使っていた。
「ダメだね、ホースに穴があいて、オイルが全部漏れちゃってる。このままレストエリアへなんとか行っちゃったほうがいいよ」

ダーリンは携帯で迎えに来てくれる人に事情を説明している。
「迎えに来てくれるのはね、元旦那のエックス(元嫁)。可笑しいもんだわよ、こんな”地の果て”で動けなくなった時まで、一番最初に連絡するのは彼女なのよ」

メアリーも「まあ、なんとかなるんじゃないの?」

運転手のアーニー爺さんは、あと1キロだけ走ってくれればいい。と、レストエリアへ車を向けた。最後は上り坂で、上る最中に「プスン、プスン、プスン」という音がしはじめた。

乗客の女達は
「大丈夫、あんた、出来るわよ!You can do it! You can do it!!」と座席に座りながら車を励まし、「まるで中学生に戻った気分ね」と笑った。

まるで念力が効いたかのように、なんとか上り坂を終え、レストエリアの三番目に駐車した途端、プシューーーッ、と音をだして、車は完全に停まった。

誰も驚かない。
誰も責めない。
皆、困った顔もしない。

外へ出て、サンセットポイントの風に吹かれながらそれぞれに「思い」もなく(普通なが「思いを噛み締めながら」という所だろうが、彼女たちには何の思いもなかった)その場を楽しんでいるようだった。

「私、ここにいる女の人、皆、魔女だと思うわ」と言ったら、全員がピクンとした。
その反応に、あ、こりゃ本当だ、と一人でウケて笑ってしまった。

1時間ほどボーーっとした後、替えの車が到着し、魔女たちのシャトルは、再度動き始めた。

袖振り合うも他生の縁 と言うが
私たちは他生で一体、どんな風に一緒に居たのだろうか?
そんな事を考えると、遅れたシャトルも、妙に数百年、トリップしたようで、愛おしく思えるのだった。

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