男の手

その手は、若く繊細な表情をしていた。
ただひとつ、通常の繊細な手と違ったのは、細胞の核質の間の、細かいシワ全てが、とても白かった事。

  ***

その手の持ち主はまだ30台の日本人。ハリウッドにほど近い場所で、人気のある高級寿司屋を営んでおられ、自ら花板さんとして、包丁を握っていらっしゃる。
彼の風体から、彼の料理はとても繊細で美意識の高いものだろう。

ご縁あって、ベイビーフォトを撮らせていただいた。
パパの手の上にベイビーの足をのっけて足のアップを撮らせていただいた時、パパの手の白い筋に釘付けになった。

  ***

LAの冬はとても乾燥している。
今年はいつにも増して乾燥していた。
お風呂上がりに肌が乾くとカユミがでたり痛くなるほどの年は初めてだ。

普段の台所仕事だけでも乾燥で手が痛かった。ハンドクリームを塗っても塗っても追いつかないほど。日本に居た時のアカギレとはケタ違いだった。

その中で、お寿司をどれくらい握り、手をどれくらい水気に浸し、仕事をしていらっしゃるのだろう?
お寿司の酢は、乾いた手に、どれくらいしみる事だろうか。
乾燥した手の細胞の核質の中に酢が入り込んだのであろう、白い筋のいっぱい入った手。
仕事柄、ハンドクリームなんて仕事中は塗れないのだ。
痛いなどとも言っていられないのだ。

なんて尊い手。

私よりうんと年下だが、家族を養う気迫や責任感と、ベイビーを抱くときの壊れ物に触れるような優しさが、彼の白いシワの「手」と重なり、感動しないではいられなかった。

この手がお金を生み出しているのだ。
この手が家族を守っているのだ。
彼の手のシワの白さは、それを物語っていた。

その白い筋の入った手に触りたいと思った。
その手を抱きしめたいと思った。
なんと愛おしい男の手。。。

  ***

まだ幼かった頃、自分の父の手が自転車の修理の油で真っ黒に汚れていて、ちゃんと洗ってくれないと汚く、友達に父の手を見られたらカッコ悪いと思っていた。
私は、その真っ黒い手に、育ててもらったのだ。
あの時の父も、30数才。

  ***

今の私よりうんと若くして、無条件の愛に生きる男たち。
愛する者を守るため、必死で働いている。
深く頭を下げずにはいられない。

カメラ越しに見せていただいた手に、男の人生を見、
男の愛に、男の人生に、涙が止まらなかった。

その手は、愛する人たちを守っている手だ。

男の手。
それはとても美しい。

広告

男の手」への1件のフィードバック

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中