トニーは、サンタモニカで
ダンススタジオのオーナーをしている。
彼はいわゆるスタジオの人というよりは
なんだか少し雰囲気が違って
なんというか、いわゆる多角的なにおいがした。
ブレてない、というか
こいつ何モノ?感があり、
私の興味の触手がピコンと動いた。
そのスタジオにはコーヒーバーもあって、
トニーがコーヒーを入れてくれる。
するとジャズ・カフェのマスターみたいにも見える。
「今度、モンタナストリートのほうにカフェ、出すんだ」
と言ったので
「ここのオーナーだよね?」
と聞くと
「そう、ラテンのダンスの先生として、自分でも教えてる」
ここのスタジオは音響も最高で
ライト関係がオシャレで、
大きな写真が飾ってあって、
印刷がかっこよかった。
それに関して質問したら、やたら詳しい答えが帰ってきたので
「これ、自分の写真?フォトグラファーなの?」
と聞くと
雑誌などをやっている
ファッションフォトグラファーなんだと言った。
「うわぁ!どれが本業?」
と私は聞くと
トニーは笑顔で、
「どれも本業だよ
どれが本業って決めなくちゃいけないことってないだろ?
全部本業。
その時にそこに集中する。
生きてること、ぜーーんぶ本業!」
と言った。
新鮮だった。
一本に絞る、という神話を、
誰が作ったんだろう?
いろんなタイプの人がいたら、
いろんな生き方がある。
そんなとても基本なことを
ふとリマインドされた日だった。